No.1-013
『末娘の秘密』17×22cm(顔彩、カラーインク)1996年
それはあたりまえの少女だった。ともすると眼が少しばかり大きすぎたかもしれないが、それとてほんの少し大きすぎるだけなので、見る方の人は、どうやらこれぐらいの眼なら、ちょいちょい見たことがあるような気がするのであった。
或る日のこと、彼女が木から落ちた時、そのとき自分がたてた声がいかにも奇妙な声だと、彼女にもはっきり感じられた。それは非人間的で、また音楽的であった。
彼女はせつなく思うのであった、(いったいあたしの中に、どんなからくりが隠れているんだろうか・・・)
人目に立たずにいることほど気持ちのよいことはなかったので、彼女はたいていの場合、黙っていることにした。彼女の見仕舞も、それは極めて質素な、極めて地味なものだった。彼女はその音楽を隠した喉のまわりに、何時も無地の灰色の幅のひろいリボンを結んでいた。
(しゃべらずにいようと思えば、たいして難しいことでもありませんわ)と、彼女は思うようになった---。
シュペルヴィエル.作『ヴィオロン声の少女』より