赤ずきんが森にさしかかったとき、狼と出くわした。
「おい、赤ずきん。お前、どこへ行く。」
と、狼が声をかけた。
「おばあさんのところ。体の具合が悪いらしいからお見舞いに行くの。」
と、早口に話す赤ずきん。
「手に何を持っている。エプロンの下だ」
「お菓子とぶどう酒。お菓子は私が昨日焼いたわ。」
狼は赤ずきんと並んで歩きながら、そっと舌なめずりをしたものだ。
「なぁ、赤ずきん。あれを見な。きれいな花がむやみに咲いてる。
たくさん小鳥たちもあちこちでさえずってる。
森のなかってものは、実にどうも素敵なところだ。
なぁ、赤ずきん。そう思わないか?」
赤ずきんは、立ち止まって辺りを見渡した。
朝の光がきらきらと木の間に洩れていた。
花は、一面に咲き乱れていた・・・。
※『赤ずきん』の中の、一番印象的な出会いの場面。言葉を少しアレンジしました。