ドリーミング
最近またケイト.ブッシュのCDを聞き直している。私は彼女の音楽を、BGMとして聞くことができない。軽率な態度で聞くことを許さない程に、彼女の音楽はあまりに深遠で、不可解で、神々しい。
殊に『THE DREAMING』の頃の彼女の音楽は、心の叫びのようなものに満ち満ちていて、胸をえぐられるような気持ちになる。純粋と狂気の入り交じった特異な世界。こんな音楽を創造してしまう才能は、もう二度と現れることはないんじゃないだろうか。本当に特別な人だと思う。
私は20代の半ばくらいの頃に、ケイト・ブッシュの音楽を毎日のように聞いて過ごした。あの当時、私はすっかり目標を失っていて、絵を描く意欲もなくしていた。今思い起こすと、心のバランスを少し崩していていたようにも思う。私は誰かに寄り掛かったりするのが嫌いだったから、誰の助けも求めずに一人でもがいていた。そんな時、ケイト・ブッシュの音楽を聞くと、心のずっと奥深いところに、かすかな明かりが灯る思いがしたものだった。以来私にとってケイト・ブッシュの音楽は、欠くことのできない大事なものの一つになっている。
さてそのケイト・ブッシュだが、前作『レッド・シューズ』を出して以降、表舞台からまったく姿を消してしまった。もうかれこれ十年くらい新作を発表していない。私はその後の事情をまったく知らなかったのだけど、どうやら子供を生んでお母さんになって、しばらく音楽活動から遠ざかっていたらしい。ところがネットで探った情報によると、現在(昨年から?)ニューアルバムを制作中らしい! 長い空白の後に、彼女がどんな音楽を聞かせてくれるのか、今から待ち遠しくてならない。