最近またケイト.ブッシュのCDを聞き直している。私は彼女の音楽を、BGMとして聞くことができない。軽率な態度で聞くことを許さない程に、彼女の音楽はあまりに深遠で、不可解で、神々しい。
殊に『THE DREAMING』の頃の彼女の音楽は、心の叫びのようなものに満ち満ちていて、胸をえぐられるような気持ちになる。純粋と狂気の入り交じった特異な世界。こんな音楽を創造してしまう才能は、もう二度と現れることはないんじゃないだろうか。本当に特別な人だと思う。
私は20代の半ばくらいの頃に、ケイト・ブッシュの音楽を毎日のように聞いて過ごした。あの当時、私はすっかり目標を失っていて、絵を描く意欲もなくしていた。今思い起こすと、心のバランスを少し崩していていたようにも思う。私は誰かに寄り掛かったりするのが嫌いだったから、誰の助けも求めずに一人でもがいていた。そんな時、ケイト・ブッシュの音楽を聞くと、心のずっと奥深いところに、かすかな明かりが灯る思いがしたものだった。以来私にとってケイト・ブッシュの音楽は、欠くことのできない大事なものの一つになっている。
さてそのケイト・ブッシュだが、前作『レッド・シューズ』を出して以降、表舞台からまったく姿を消してしまった。もうかれこれ十年くらい新作を発表していない。私はその後の事情をまったく知らなかったのだけど、どうやら子供を生んでお母さんになって、しばらく音楽活動から遠ざかっていたらしい。ところがネットで探った情報によると、現在(昨年から?)ニューアルバムを制作中らしい! 長い空白の後に、彼女がどんな音楽を聞かせてくれるのか、今から待ち遠しくてならない。
■追記(2005/12/11)
その待望の新アルバムが2005年11月2日、遂に発売されました。私にとっては大事件でした。発売前の数ヶ月間、本当に楽しみな気持ちでいっぱいだったのですが、その一方で、長いブランクの後で彼女がいったいどんな音楽が聞かせてくれるのか、怖い気もしていたのです。。。
でもそんな不安は、実際にアルバムを聴いてみて見事にかき消されました。本当に素晴らしいアルバム! 繰り返し聞く度に鳥肌が立つようです。思いが余って、今はちょっとうまく言葉にできないので、このアルバムの感想については、また次の機会に。
Kate Bush 『Aerial』→http://www.katebush.com/