銀座に出かけた折、レイトショーで『アメリ』がやっていたので、ちょうどいい機会と思って観て来た。この映画を私は公開前からずっと楽しみにしていたのだけど、あまりにもたくさん人が入るものだから、なんだか足が遠のいてしまっていた。根がひねくれているものだから、たくさんの人が同じ方向を向くようになると、もうそこには関心がなくなってしまう。でもこの作品の監督は、ジャン=ピエール・ジュネ。私のとても好きな監督のひとり。観る前から、私の期待は相当なものだったのだけど、実際に作品を観てそれ以上に感激してしまった。とても素敵な映画。
ひどく内気な女の子が、ある時あるきっかけから、他人の人生をほんのちょっと幸せにしようと意を決することから、この物語が始まる。彼女がちいさな作戦を思いつき、それを実行した時、その周りの世界がポツッ、ポツッと明るくなる。その光はとてもちいさくてはかないものだけれど、私たちの世界にかけがえもなく大事なものだと気づかされる…。
「観た人が幸せな気分になるような映画を作りたかった」と、監督本人がコメントしている通り、この映画を観終るとなんだかとてもあたたかい気持ちが胸の奥に込み上げてくる。人生に必要なのは、品のない笑いやしみったれた慰みものや、お手軽な「癒し」なんかじゃない。ほんの一瞬、世界が輝く場面に立ち合うことができたなら、その記憶を心にとどめていられたなら、人はたいていの苦しい場面も我慢して生きていけるのだと思う。
自分の周りの世界をほんのちょっと明るくするために、私たち一人一人が自らの小さな灯を掲げれば……その時、世界はどんなに美しく輝くことだろう…。