バルト三国の旅2011(その28) 〜ヴィリニュス郊外のトラカイ島城

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長々と綴ってきたバルト三国の旅ですが、いよいよ最後のイベント。この日、早起きして向かったのは、ヴィリニュス郊外にある「トラカイ島城」。湖の向こう側にぽっかりと、赤い三角帽子の古城がその姿を現しました。

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まるでおとぎ話に出てきそうな、メルヘンチックな外観。でも、そのかわいらしい印象とは裏腹に、トラカイ島城は重要な軍事拠点でもありました。

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13世紀後半、君主ケストゥティスは、ガルヴェ湖上に浮かぶ島に城の建設を命じます。王家はここを居城とし、宝物庫も移動。ドイツ騎士団との攻防の要としても重要な役割を担い、その後も増改築を重ねて堅牢な城となりました。14〜15世紀のトラカイ島城と城下町はリトアニア大公国の中心になったのです。しかし16世紀に入って政治的・軍事的機能を失ってからは次第に衰え、ロシアからの攻撃を受けて城は崩壊。その後は荒れ放題になっていた時代が続き、再建の事業が始まったのはようやく20世紀に入ってから。ソ連占領時の紆余曲折を経て、独立回復後の1990年代初頭に修復工事が完了しました。

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城の本丸となる建物。2棟の建物が連なる中央の塔は、6階建て、35メートルの高さがあります。

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公爵宮殿の中庭。壁面には木製の回廊が設置されています。当然ながら建物内にも階段がるのですが、この外回廊は主に物資の運搬に使われたそうです。

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宮殿内の広間は、当時の様子をそのままの形で残してあるそうです。赤煉瓦を使ったゴシック様式のアーチ式天井が力強い美しさを放っていました。

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建物内の各部屋では、かつての城の姿を伝える遺跡や資料、宝物の展示がされていました。展示された宝物の装飾や、当時の衣装などを見ると、ヨーロッパ西側とは明らかに異質な文化であったのだと感じずにはいられません。

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平日だったせいか観光客は割と少なかったのですが、学校の先生に引率された子どもたちが大勢見学に来ていました。そういえば、この子供たちと資料展示室で一緒になったとき、私の近くにいた女の子が「この珍獣は何!?」と、驚愕のまなざしで私のことを見つめていた姿が忘れられません...(笑)。きっと、あの子たちにとってはじめて見るアジア人は、古城の宝物以上に興味をそそられる対象だったのかもしれませんね。。。

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ところで、このトラカイ島城は「小さなマルボルク城」と呼ばれることがあるそうです。マルボルク城とは、ドイツ騎士団がバルト海沿岸地方征服の拠点として建設した巨大な城のことです。確かに外観が似ていますね。。。それもそのはず、休戦中の時代にドイツ騎士団の石工が拡張工事の指揮を執っていたのだそうです。しかもそれは1410年の有名な「グルンヴァルトの戦い」直前のこと。両者が激しい戦闘を繰り広げた城なのに、その増改築を受発注しているなんて・・・なんとも不思議な関係ですよね。。。(^^;)

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トラカイと呼ばれる地域は、2つの湖に挟まれた南北に細長く伸びる半島。この周辺には200を超える湖があって、その美しい景観は自然公園として保護されています。古城見学だけでなく、ボート遊びやハイキングなどを楽しめる行楽地として、国内でも人気の観光地となっているそうです。城に近い湖の沿岸には、いくつかのレストランやカフェが点在しています。

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その中の一軒、通りから少し奥まったところにあったお店で、この日のランチをいただきました。木々に囲まれたちいさなテラスに、かわいい猫がお出迎え。

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メニューがまったく読めなくて、よくわからなかったのですが・・・店員さんに聞きながら、郷土料理っぽいものを選んでみたつもり。ヌードルの入ったスープは、確か羊肉で出汁をとったもの。ミートパイは、羊・豚・牛から選べました。

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面白かったのが、このタジン鍋のような器を使った料理。これが郷土料理なのかどうかはわからないのですが、このお店では自慢の料理のようでした。羊肉の味が濃厚で美味。

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トラカイの名物料理として一番有名なのは、前々回の記事に書いた「キビナイ」という羊肉のミートパイ。トラカイ島城に行く途中の道で、こんな風に地元のおばさんたちが手作りのキビナイを売っています。当たり外れがあるかと思いますが、私はこのときに路上で買ったキビナイが最高にうまかったです。。

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トラカイへは、ヴィリニュスからバスで40〜50分くらい。確か1時間に2〜3本走っていました。バスターミナルのインフォメーションに行くと、バスの出発時間と乗車口(出発時間によって変わります)がプリントされたタイムテーブルをもらえます。ただ、バス停を降りてから城までの道程が結構遠い......。こんな感じの道を延々と20〜30分歩くことになります。。

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トラカイは、カライム人、タタール人、ロシア人、ユダヤ人などの異なる民族が共存して築かれた町で、中でもカライム人がこの地に独自のコミュニティを築いてきました。カライム人はトルコ系の独自言語を持つ少数民族で、ユダヤ教の一派とみなされています。彼らのルーツは、今日の世界情勢で注目を集めているクリミア半島にあるそうです。14世紀末、現ウクライナ南部にまで領土を広げていたリトアニアは、彼らを傭兵として移住させたことが始まりでした。そして現在も、独自の民族性を守りながらこの地に暮らしています。

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通りに面して3つの窓が並ぶ造りが、カライメの伝統的な住居なんだとか。必ずしも三窓というわけではなかったのですが、独特なユニークな造形の住居をいくつか見かけました。

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そして、トラカイではたくさんの猫たちに出会いました。猫たちの人懐っこい表情を見ていると、ここがとても住み良い環境なのだと伝わってきます。

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城からの帰り道、湖畔を歩いていたら、湖とは反対側の野原からものすごい勢いで駆け下りてくる白鳥に遭遇。。

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白鳥たちの目当ては、このおばあさんが手に持っているパン屑でした。いつもこうやって白鳥たちにゴハンをあげてるんでしょうね。。なんとも微笑ましい光景。

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豊かな緑と水に囲まれたトラカイは、終日ここでゆっくりしていたくなるほど心地よい風土でした。リトアニアの魅力は歴史的建造物よりも、悠久なる自然の大地にあるのだと気づかされます。いつかまたリトアニアへ行くことがあったなら、地方の田舎町に滞在して静かな田園風景をのんびり歩いてみたい。〈続〉

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