先日、アンジェイ・ワイダ監督の最新作「ワレサ 連帯の男」を観てきました。東欧民主化への大きな潮流の先頭に立った、ポーランドの元大統領ワレサ。予測できない時代の流れに翻弄されながらも、彼は人を引きつける演説を行い、周りの人間を大勢巻き込んで、様々な偶然をも力に変えて、世界を動かすうねりを作って行く・・・。
ワイダは彼を英雄としてではなく、複雑な面を持った一個の人間としてユニークに描き出していました。情に厚く、ひたむきで正直な性格でありながら、気難しくて頑固で破天荒、屈強でエネルギッシュな人物像。そして、グダンスクの造船所に集まった人々の高揚した空気感の描写がとても印象的でした。治外法権のような空間の中で、労働者たちは自由を渇望し、理想に燃え、ここから世界を変えられるのではないかという期待がみなぎっていたのだと思う。
劇中に当時の記録映像を巧みに交錯させてリアリティを紡ぎ出す、ワイダの映画手法は見事。正直言えば、映画の魅力としては物足りないものもあったのだけれど・・・当時の空気感が生き生きと描かれていて、その点で感動的な映画でした。80年代末の東欧民主化への時代状況に関心ある方には、ぜひ観ていただきたい作品。
★公式サイト→http://walesa-movie.com/