バルト三国の旅2011(その10) 〜タリン旧市街を歩く(3)〜

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ニコラス聖堂の横道にある「リュヒケ・ヤルク通り」という階段を上っていくと、旧市街を一望できる高台があります。階段の途中では、陽気なおじさんがずっとギターを弾きながら歌をうたってました。

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タリン旧市街は、為政者や貴族たちが居を構えた「山の手」と、商人や職人、庶民たち暮らしていた「下町」とに分かれています。先程の広場があったのは下町の中心地。階段を上って丘の上にあるこの城壁を出た先の地区は「山の手」の"トームペア"と呼ばれていて、トームペア城や大聖堂など、時の権力を象徴する建物が並んでいます。

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大聖堂の外観。デンマーク人がこの地を占領してすぐに建設した、エストニア最古の教会なのだそうです。残念ながら教会内部は撮影できなかったのだけど、この大聖堂の内装や雰囲気は本当に素晴らしかった。中央の祭壇よりも、壁面いっぱいに無数に飾ってある紋章の、過剰な装飾に圧倒されます。聖人だけでなく、貴族やかつての富裕な職人・商人たちの墓石もたくさん刻まれている。遥か遠い時代に生きた人々の息吹が、今もかすかに漂っていそうな空間。古色に染まった木のベンチに座って、しばらく呆然と時を過ごしました。。

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こちらも有名な「アレクサンドル・ネフスキー聖堂」。ロシアに支配されていた時代を象徴する建物。トームペアに君臨するかのごとく、その中心にどっしりと存在感を放っています。ロシア側から見れば、アレクサンドル・ネフスキーはドイツ騎士団の侵攻を駆逐した歴史的な大英雄。カトリック=キリスト教世界の無際限な拡大を阻止したという意味でも、彼の偉業には大きな意味があると思う。しかし、エストニアの精神的支柱となる大聖堂やトームペア城を睨み監視するかのごとく、ここに正教会の聖堂があるのは、なんとも言えない違和感を感じてしまいます...。

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大聖堂の手前のコフトゥ通りを少し歩いた先に、旧市街を展望できる展望台がありました。ここから見渡した景色は、思わず感嘆の声を上げずにいられません! まさに絵のような美しさ。。

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素晴らしい景色なのだけど、この丘の上は冷たい風が吹きすさび、とにかく寒かった...。展望台広場にあった素敵なカフェテラスで、ちょっとひと休み。ここで飲んだホットワインに、体も気持ちもあったまりました。

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あまりにも寒いので帰ろうかと思ったのだけど、途中の脇道に心惹かれて、例によって当てもなく歩いて行ったら、その先にもうひとつ別の展望台を見つけることができました。こっちからの方が海まで見渡せて、先程の展望台以上にすばらしい景色を見ることできます。展望台に行かれる方は、ぜひ足を運んでみてください。

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北欧らしい控えめな青空と低く流れる雲、その下に立ち並ぶ赤い三角屋根のコントラストの美しさは、今回の旅の中で忘れられない思い出になりました。〈続〉