【クロアチアの旅(その5):ザダル旧市街(2)】
陽が落ち始めると、ザダルの街全体がオレンジ色の光に包まれます。
旧市街がある半島の先端は、恰好の夕景色スポット。沈む夕日の一瞬を見届けようと、大勢の観光客、カップルや家族連れが海岸に集っていました。かのヒッチコックが、ここから見た夕日の眺めを「最も美しい夕日が見える場所」と称して讃えたそうです。
この海岸の大理石の階段には、波と風の作用によって不思議な音色を奏でる装置が据えられていて、それは「シーオルガン」と呼ばれています。まぁ、そうは言っても観光客向けの眉唾物だろうと、何の期待もせずに耳を澄ませてみたら・・・想像以上に素敵な音色に正直びっくり! どこかでスピーカーから音楽を流してるのか思うくらい、しっかりした音色が周囲に響き渡っていたのです。まさに、海と風が奏でる音楽。ずっと耳を傾けていたいと思うほど、優しくて心地よい音色でした。
いったん宿に戻ってひと休みしてから、先程のドナト聖堂で開催されるイベントへ出かけます。夜のゼレニ広場は、さっきまでの陽光まばゆい景色とは趣きががらりと変わり、どんよりと広がる闇の中に街灯が幻想的な光を放っていました。
聖堂の門が開いていたので中に入ると・・・・ロウソクの灯りだけが置かれた深遠な空間に、白い衣装をまとった美しい女性たち。彼女たちは軽やかな身のこなしで神殿内をあちこち移動し、時おり非日常的な動作を繰り返している......。
しばらく状況がつかめないまま椅子に座っていたら、シスター風な女性が心配そうに声をかけてくれました。「今日はコンサートではなくて、ダンスのパフォーマンスだけどいいのか?」というような内容。てっきり、声楽か弦楽器のコンサートが開催されるものかと思っていたのだけど、なんとその日のプログラムはコンテンポラリー・ダンス。「もちろん!」と答えて、開演時間を確認してチケットを買い直しました。このとき、彼女たちはまだリハーサル中だったのです。(どうりで、こちらを不思議な目で見ていたわけだ・・・)
後で知ったのだけど、彼女たちは「ZADARSKI PLESNI ANSAMBL」という、ザダルを拠点としているダンス・アンサンブルで、クロアチアのコンテンポラリー・ダンスとしては草分け的存在のひとつ。そしてこの日のパフォーマンスは、掛け値なしで素晴らしかった。太古の女性の神聖さと現代に至る苦悩を、緊張感あるパフォーマンスによって表現しているように私は感じました。
クロアチアに来た初日に、こんなにも素晴らしいアート・パフォーマンスに立ち合えるなんて! なんという幸運。本当に、心がふるえるほどの感動だった。
感動の余韻に浸りながらも、お腹が空いてきたので晩ご飯のお店を探して路地を徘徊。
迫力満点のアイスクリーム。私は食べ損ねたけど、相方の話ではすごく濃厚で美味しかったらしい。
飲食店が多く建ち並ぶ路地では、至る所で陽気な音楽が響き渡る。夜が深まるにつれ、クロアチアの街はますますラテンの血が濃くなっていくようだった。
さんざん迷った末に辿り着いたお店で食べたのがこれ。左はクロアチア名物の蛸サラダ。それとエビを絡めたパスタ。どちらもシンプルな料理ではあるけれど、食材が新鮮で本当に美味しい! すでにかなり遅い時間になっていたので、この日は控えめにこの2品だけ。そしてもちろん、地元クロアチアのワインで乾杯♪
かわいい猫が「クロアチアへようこそ♪」って、あいさつしてくれた。