9月12日

9月12日は、とても密度の濃い充実した一日だった。
 
まずは青山のPinPointギャラリーで開催されてた、こみねゆらさんの個展「にんぎょうげきだん」を観に。ずっと楽しみにしてたのに、結局最終日になってしまってギリギリセーフ。どの作品も繊細で細やかで素敵だった。入口すぐに展示されてた、ちいさなちいさな絵と、ちいさなちいさなちいさな人形たちがとても素晴らしかった。
 
それから、外苑前のギャラリーで開催されてた「ジョナス・メカス新作写真展」へ。彼の代表作「リトアニアへの旅の追憶」は、はじめて観た時から強烈に心を引き寄せられた作品。今回の展示は「フローズン・フィルム・フレーズ——静止した映画」と題されたフィルムの数コマを印画紙にプリントした作品群。これは写真なのか?、映画の延長なのか? 観ているといろんなイマジネーションが湧き上がってくる。ジャンルや技法のことなどは実際どうでもよくて、ジョナス・メカスが捉えたその場の空気と光が特別な存在感を放っていると感じる。この上なく優しくあたたかで、美しい光。
 
そのあと、少し時間をつぶそうと思って、近所にあるワタリウム美術館に行ってみた。ここのB1Fにはアート関連の書籍がたくさん揃った本屋がある。物色するだけで何も買わないつもりだったのに、入ってすぐに、サラ・ムーンのコンパクトな作品集が目に飛び来んできて、思わず手を出してしまう…。小さなサイズの写真集だけど、とてもよくできたセレクション。あれこれ見てるとたくさん買い込んでしまって危険なので(笑)、レジに向かおうと思ったその時、ずっと探してたチュルリョーニスの本(「チュルリョーニスの時代」)が目の前に! チュルリョーニスは私の一番好きな画家の一人。この本の著者は、ヴィータウタス・ランズベルギス。チュルリョーニス研究の第一人者であり、音楽家であり、独立後のリトアニアの初代大統領となった人。本を開くと、序文をジョナス・メカス書いていてびっくり。そういえば「リトアニアへの旅の追憶」の中で、とても心に響くピアノの旋律を弾いていたのはランズベルギスだった。

チュルリョーニスと、ジョナス・メカスと、ランズベルギス。リトアニアのことが、自分の中で突然ぐるぐると回り始めていくようで、とても不思議な感覚だった。いや、リトアニアの回りを、ただ自分がぐるぐる回ってるのか。
 
ワタリウムを出て、次は茅場町に移動。〈七針〉でのライブ。この日の出演は、穂高亜希子、北村早樹子、とうめいロボ。実力派の女性シンガーソングライター三人の、素晴らしい組み合わせ。最初の出演は穂高亜希子さん。前半がギター演奏の曲で、後半はピアノの曲。私はピアノの曲の方が今回は良かったなって感じた。はじめて穂高さんの歌を聴いたときは、胸を刺されるような痛みを感じた。でもその後何度も繰り返し聞くうちに、じんわりと心に染み入ってくる、透き通った優しい光のような感触を感じるようになった。とがったものと、穏やかで優しいものと、その両面が秘められてる歌だと思う。もっと、ずっと聴いていたい演奏だった。
 
次の出演は北村早樹子さん。ライブを聴くのは2回目。最初に聞いた時感激してCDを買って聞いたけど、やっぱりライブの方が歌声に緊張感があっていいなって思った。MCでの話、「へばの」という青森県六ヶ所村を舞台にした映画のエンディングに、北村さんの曲が使われてるのだそうだ。「へばの」は少し前に〈ポレポレ東中野〉で上映されてて、とても気になっていた映画。10月にも自主上映会があるそうなので、観に行こうかな。
 
最後の出演はとうめいロボ。とうめいロボさんのライブを聴くのは、これで4回目。毎回素晴らしいパフォーマンスを見せてくれるのだけど、私の聴いた中では今回の演奏が一番充実してるように感じた。貫禄すら感じさせる、本当に素晴らしい内容だった。途中から伴奏で参加した添田雄介さんとの音のあわせ方も素晴らしかった。添田雄介さんは11月15日の七針でのライブに、銀塩つばめの端子さんと共演されるらしい。とても楽しみ。
 

七針からの帰り道の川沿いの風景。素晴らしいもの、美しいものに触れた後は、いろんなものがきらきらと輝いて見える。