私はムーミンの物語以上に、トーベ・ヤンソンの描く絵が大好きです。絵のタッチを真似したくて、何度か模写してみた時期もあったくらい。今回はじめて原画を見ることができたのだけど、想像以上に素晴らしく、原画で見るペンの描線はすごく繊細で美しかったです。描いている情景によって様々なタッチを織り交ぜてあって、場面の空気感まで描き出しているのです。夜の暗い森の場面では太めな重い描線で描かれ、霧が立ちこめるシーンではとぎれとぎれの細い線で描いてあって、走っているシーンでは流れるような鋭い線が勢いよく画面を駆け抜けて・・・という具合に。
ちょっと意外に思ったのは、原画がとても小さく描かれていること。こんなに細かい部分まで描き込むのなら、もう少し大きなサイズで描けばいいのに、と素人考えに思ってしまうのだけど、きっとその小さな画面だからこそ凝縮されて生まれてくる世界があるのでしょう。
私は展覧会で作品を観るときはいつも、その作品が描かれた制作年を気にかけるようにしています。傑作を数多く世に残した画家たちも、必ずその人の転機となるような一年があって、その時期に代表作となる傑作が集中して生まれていることが多いのです。その一年の前と後では、作品の性質ががらっと変わってしまう場合もあります。飛躍的に良くなることと、悪くなってしまうことと、両方のケースがありますが・・・。と言っても、その判断はまったく自分の独断と思い込みによるものなので、何の根拠もありません。自分だけの楽しみ方です。。
今回の「ムーミン展」を観ながら、私が注目したのは「1957年」でした。その年に描かれた作品に、私にとって印象に残る作品がとても多かったのです。初期の頃は、どちらかというときっちりと、下絵を元にペン入れしてる印象なのですが、1957年頃を境に、ラフな描き方を多用するようになり、ペンの走りが勢いを増しています。モチーフをきちっと描き込むことよりも、場面の雰囲気や心理描写を描くことに、トーベ・ヤンソンの関心が移っていったのではないでしょうか。初期の頃から天才資質を発揮した優れた挿絵を数多く残していますが、1957年以降、一枚の絵としての完成度が更に高まっていったように感じました。
大丸ミュージアムって、私は今回はじめて行ったのですが、とてもちゃんとした美術館でびっくりしました。作品数がすごく多くって、とても充実した内容でした。カタログも良くできていました(DVDもついて1800円。お買い得です!)。あと、併設されたショップでのムーミングッズが大変な充実ぶり。まんまとその術中にはまった私たちは、両手いっぱいにグッズや本を抱えてレジに向かったのでありました。。
東京での開催は今月18日(月)まで。とても素晴らしい展覧会ですので、気になった方はお見逃しなく!
★ムーミン展@大丸ミュージアム http://www.daimaru.co.jp/museum/tokyo/moomin.html
きりゅう
行かれたのですね~~!
とても行きたかった展示なので、参考になりました。
いつかフィンランドのムーミンランドに行きたいワタクシです(^^)
*ミトン*
こんばんは♪
ジャムサンドさん おひさしぶりです。
さすがに絵を描かれる方は
見る視点が違いますね。
そんなふうに見たことなかったので
今後の参考にしたいと思います。
以前、近場で行なわれたムーミン展へ行きましたが
原画は本当に小さなもので驚きました。
緻密で几帳面な印象を受けました。
ムーミンといえばアニメーション、なのですが
やっぱり原画はいいですね。
独特の色使いとか、線とか・・・。
カタログ、お買い得でしたね!
よこやま
>きりゅうさん
きりゅうさんもムーミンファンだったのですね♪
展示会、観に行けましたでしょうか?
会場のモニターでフィンランドの「ムーミン博物館」の紹介映像が流れてて
私もいつか必ずフィンランドに行きたいと思ったのでした。。
よこやま
>ミトンさん
おひさしぶりです!
ご無沙汰してしまってるのに、コメントありがとうございました。
(ブログはいつも拝見させていただいてますよ)
私の文章はいつも長いばかりでいつも的を得ない内容で恥ずかしいのですが・・・
絵についてのことだけはできるだけ思ったことを率直に書いていこうと思ってます。
ムーミンの原画、ご覧になったことあるのですね。
本当に、あの小ささにはびっくりでした。
あと、カラーのイラストが、印刷されたものよりもずっと淡い色調で
とても素敵だったのが強く印象に残りました。
やっぱり絵は現物で見ると、違う発見がたくさんありますよね。
古い方のアニメーション版ムーミンも、私は好きなんですけどね。
あれを見てムーミンに愛着を持った世代ですので。。
名倉さんが描くムーミンのイラストも好きです。
ヒラコ
今頃ですが、遅ればせながら。
私もやっと、最後に行ってきました。(カタログは、すでに売り切れでしたが。)
本当に思った以上に、たくさんの作品が並んでいました。
つくつくと並ぶ小っちゃな紙切れは、とてもとても魅力的で。
空想の世界でもあるのだろうけれども、ト−ベ・ヤンソンさんの
小さいころから見てきただろうきれいなものたちが、
どの絵の中にも、当たり前のように在るのが見えるようで、、
どうにも立ち去りがたい展示でありました。
ム−ミンシリーズの、文も挿絵も大好きですが、
大人になって出会った『少女ソフィアの夏』なども、とても好きで、、
いつか、フィンランドの島などの、自然や暮らしを見てみたいな、、と思います。
よこやま
>ヒラコさん
あ、ムーミン展行って来たのですね!
正直な話、あんなに充実した展覧会だと思ってなかったので、うれしい誤算でしたよ。
百貨店の中の美術館だから、体裁整えただけの内容かな・・・て勝手に想像してたので。
以前の展示内容見ても、あそこはとてもしっかりした美術館のようですね。
ムーミンの物語は昔少し読んだきりで、ほとんど覚えてなかったので
この間文庫の本を買って読み始めてます。やっぱりすごく面白いですね。
大人になってからわかるような、ブラックな側面もあって。
それからトーベ・ヤンソンの小説の短編集も今読んでるのですが
これがすごく良くて、毎日電車の中でページをめくるのが楽しみです!
ヒラコさんおススメの『少女ソフィアの夏』も、今度読んでみますね。
ティミアン
ご無沙汰しています。
ムーミンはいつもテレビで観ていたので、ムーミン展は行きたかったです。
よこやまさんの展覧会の見方、感心しました。
やはり絵を描かれる方は見方も少し違うのかなと思います。
DVD付きカタログまであったのですね。とっても残念です。
よこやま
>ティミアンさん
おひさしぶりです!
こんな長ったらしい文章を読んでくださってありがとう。
描かれた年代を注視するのがいいことかどうかわからないのですが、
その画家がどういう変遷を辿っていったかが、私はすごく興味あるのです。
ムーミンの古い方のアニメーションを、子どもの頃一生懸命見ましたよね。
トーベ・ヤンソンはあのアニメ版は嫌いだったようですが、
私はもう一度全部見たいと思ってるくらい、あれはあれで好きなんですけどね。
スナフキンが原作以上に魅力的でしたよね〜。