今読んでいる本

最近、ひさしぶりに小難しい本を読みたくなって、何にしようかと自分の書棚を眺めていたら、ロロ・メイの「失われし自己をもとめて」という本にふと目に止まったので読むことにした。4、5年前に買ったまま読んでなかった本(→その時につづった雑記)。最近電車の中で毎日読み進めているのだけど、深く考えさせられること、感銘を受けることがたくさん書いてある。

ふと、あとがきを先に覗いたら、なんとこの本が著されたのは1953年、今から50年以上も前だった。邦訳版が出てからも30年以上経過しているそうだ。私が手にした本はその改訳版。近年刊行された本だと思い込んでいたので、とてもびっくりした。それにしても、現代に生きる私たちの心理と社会状況を的確に言い当ていて驚かされる。この時代から問題とされていたことが何も解消されることなく、ますます顕在化しているということなのだろう。20世紀に残してしまった宿題がたくさんあるんだなって思った。

私がロロ・メイの著作を読むのはこれが2冊目。前に読んだのは「美は世界を救う」というタイトルの本。ドストエフスキーが遺した謎の言葉、「美は世界を救うか」という問いかけをテーマに置いた、素晴らしい内容の本だった。この本のタイトルは、プルーストの「失われた時を求めて」をひっかけているのだろうか。でも原題は「Man's Search for Himself」となっているから、ちょっとニュアンスが違うようなのだけど。著書の内容を踏まえて、ふさわしい邦訳タイトルを考えたのだろう。

 
この本のまえがきの冒頭の一文に、まず感銘を受けた。
「不安な時代に生きていて幸いなことの一つは、自分自身についての認識を強いられることである。」

roro1.jpg roro2.jpg