さっきニュースで知ったのだけど、スウェーデンの映画監督、巨匠ベルイマンがお亡くなりになったのだそうだ・・・。思い入れのある監督の一人だったので、とてもショックだ。享年八十九歳とのこと。また一人、20世紀を代表する巨人がこの世からいなくなってしまうのは、寂しくてたまらない・・・。
私はベルイマンの作品の中で、「処女の泉」や「野いちご」などの代表作以上に、「沈黙」という1962年の作品がとても印象に残っている。「鏡の中にある如く」「冬の光」に続く、神の沈黙・三部作のひとつ。正直な話、ストーリーはあまり覚えていないのだけど、作品に込められたテーマが強烈に心に響く作品だった。
「私たちの日常は、昨日と今日と明日とが「連続」したものだと思っている。少なくとも、そう思おうとしている。しかし現実には「非連続」な局面が人生にたくさんあるのだ。そうした場面に直面すると私たちは苦悩し、そして「神」を求める。・・・けれども「神」はいつだって沈黙だ。だから代わりに「愛」でもってその埋め合わせをしようとする。ところが、私たちはそこに至って決定的に裏切られるのだ。互いが掲げ合った「愛」は、苦悩を解消するどころか、ますます別の溝を深めてしまう。「愛」がつくり出すのは、いつも無駄と矛盾だ。そして「神」はやっぱり沈黙したままなのだ・・・」
——これは私が20代半ばの時に映画を観た後に書いたメモなので、青臭い言葉で恥ずかしいのだけど、映画を観た後に私が感じ取った作品のテーマでした。神を信じず、愛を信じないベルイマンは、日常の中での偽りの幻想を剥ぎ取り、人生の苦悩を容赦なく描き出し、私たちがそのことにどう向き合って行くのかを問うていたのだと思う。
その他のベルイマン作品では「ファニーとアレクサンデル」(1982年)も私の大好きな作品です。この作品は5時間に及ぶ大作でした。初期のベルイマン作品へ思い入れのある人には評判悪いのですが、私は映画史上に残る傑作だと思っています。現在DVDで流通してるものは3時間に編集された短縮版しかないそうで残念なのですが。私はVHSに落とした完全版がまだ手許にあるので、今週末は久しぶりに見返してみようかなぁ。
ベルイマンに続いて、昨日はミケランジェロ・アントニオーニが亡くなったのだそうです…。アントニオーニも愛の不毛をテーマに描いた作家でした。彼の場合は、強烈な女性讃歌が根底に(表層にも)あって、愛に満ちた作家だったと思いますが。たくさんの人に愛された監督でした。相次ぐ映画界の巨匠の死に、胸が痛みます…。
竹浪 明
「沈黙」、、列車の車窓にすれ違う戦車の映像など焼き付いています。
その戦車も、「第七の封印」の死神とのチェスも、モノクロだけに印象的でした。
アントニオーニは逆に「赤い砂漠」の色彩が色濃く焼きついています。
北欧と南欧の名匠のご冥福をお祈りします。
*ミトン*
イングマール・ベルイマンは
今年「ある結婚の風景」と
「サラバンド」を観ることが出来た監督さんです。
先日、ちらっと観て
ものすごく印象的だった
「太陽はひとりぼっち」の
ミケランジェロ・アントニオーニ監督も
お亡くなりになられたんですね・・・。
寂しいですね
よこやま
>竹浪さん
ベルイマンとアントニオーニは、まさに北と南の巨星ですね!
そのお二人がほぼ同じ時に亡くなられたのは、感慨深いです・・・・
ベルイマンの初期〜中期のモノクロの映像の重々しさは強烈ですよね。あんな風に観る人の内面に深く食い込んでくる映画を撮る人は、最近では見当たらないです。映画の中に描き出すものの容赦のなさは、ヴィスコンティと重なる部分があるようにも思います。
しっかし、日本のメディアの扱いは寂しいですね。今の若い世代でベルイマン知ってる人って、どのくらいいるんでしょう・・・?
よこやま
>ミトンさん
「ある結婚の風景」「サラバンド」は私はまだ観れてない作品です。
「サラバンド」は、ベルイマンが映画づくりから引退してしまった後、ずいぶん経ってから突然監督に復帰して作られた作品でした。日本のメディアではほとんど話題にされなかったですが…。そんな作品もしっかり観てて、ミトンさんやっぱりすごいですね。
アントニオーニは、ご自身も周りの人たちも、死期が近いことを知りつつ、最後の最後まで映画づくりに携わってたそうです。以前記事で読んで、その映画への愛情と執念に、つよく心を打たれました。
若い頃に深く影響受けたり、愛着抱いてた作家たちが、同時代からいなくなってしまうのは寂しいですね・・・