映画フライヤーの仕事

4894443376.jpg新宿の駅ビルの上にある本屋さんの、アート関連のコーナーに行ったら「ミニシアター フライヤーコレクション」って本がありました。こういう本に、自分がつくったフライヤーも載ってたらうれしいのに、って思いながらページをパラパラめくってたら、ホントに載っててびっくりしました(笑)。ヴィスコンティの「白夜」という作品のフライヤーが2点。「予想外」のことでうれしい驚きだったのですが、版元を見て納得。そこから以前出ていた「フライヤーコレクション」って本に1回載せてもらっていたので、そこからの流用だったのでしょう。


 

この「白夜」のフライヤーを作ったのは、今から4〜5年前。フリーのデザイナーとして仕事を始めた駆け出しの頃でした。今だったらもうちょっと良いものを作れると思うのですが、当時の自分ではこれで精いっぱい。私が前の会社にいたときの役職は「印刷営業」で、デザイナーとしてのキャリアも技術も、実はほとんど持ち合わせていなかったのです。会社内では印刷営業の一方で制作の仕事もやっていましたし、デザインの真似事は学生のときからずっと続けていたので、自分でも「きっとできる」という根拠のない自信があったのですが、現実は違うものでした。

制作の現場とある程度の距離を置いて関わっているのと、実際に自分自身が制作の担い手になるのは、まったく別次元のことだったのです。映画館に行った時とかに、人が作ったフライヤーを見て、「自分なら違う作り方するのに」なんて生意気なことを思ったりしていたのですが。見るのと、実際につくるのとは、大違いでした。そんな当たり前のことに、やっとその時気づいたのでした…。とはいえ、飛び込んでしまった世界でしたから、見よう見真似を交えながら、一生懸命、デザインを考えたのでした。


そんな私を支えてくれたのは、私の親しいお客さんたちでした。力不足な私にいつもあたたかく接してくれて、貴重なアドバイスをたくさんしてくれました。内心は「こりゃヒドイ」って思ってらっしゃったのかもしれないのですが(笑)。自分一人の力で生きてるんじゃないんだなって、その時に痛切に感じました。私のキャリアをつくってくれたのは、私のお客さんたちです。もちろん、今だってそうです。つい先日も、とてもうれしい仕事の話を声かけていただきました。心から感謝です。いろんな人に支えられて生きているんだなって、つくづくそう感じてます。


ついでなので、以前つくったフライヤーをもう一つご紹介。同じくヴィスコンティ監督作品の「熊座の淡き星影」という作品のフライヤー。このフライヤーは自分ではとても気に入ってて、周りの評判も良かったです。画像ではわかりにくいのですが、全面に銀のインクを使っています。2色の印刷ですが、結構コストがかかりました。この絵柄でB1のポスターもつくられて、池袋の百貨店に貼られた光景は、なかなか壮観でしたよ。自分で持ち上げるのもなんなんですが(笑)。でも自分ではとても思い入れある作品なので、どうせならこっちを本に採用してもらいたかったなぁって、ここで言ってみても無駄ですね・・・。

私の作品はともかくとして、「ミニシアター フライヤーコレクション」には素晴らしいフライヤーデザインがたくさん掲載されていますので、本屋さんで見かけることありましたら、ぜひ手に取ってみてください。