新宿の駅ビルの上にある本屋さんの、アート関連のコーナーに行ったら「ミニシアター フライヤーコレクション」って本がありました。こういう本に、自分がつくったフライヤーも載ってたらうれしいのに、って思いながらページをパラパラめくってたら、ホントに載っててびっくりしました(笑)。ヴィスコンティの「白夜」という作品のフライヤーが2点。「予想外」のことでうれしい驚きだったのですが、版元を見て納得。そこから以前出ていた「フライヤーコレクション」って本に1回載せてもらっていたので、そこからの流用だったのでしょう。
この「白夜」のフライヤーを作ったのは、今から4〜5年前。フリーのデザイナーとして仕事を始めた駆け出しの頃でした。今だったらもうちょっと良いものを作れると思うのですが、当時の自分ではこれで精いっぱい。私が前の会社にいたときの役職は「印刷営業」で、デザイナーとしてのキャリアも技術も、実はほとんど持ち合わせていなかったのです。会社内では印刷営業の一方で制作の仕事もやっていましたし、デザインの真似事は学生のときからずっと続けていたので、自分でも「きっとできる」という根拠のない自信があったのですが、現実は違うものでした。
制作の現場とある程度の距離を置いて関わっているのと、実際に自分自身が制作の担い手になるのは、まったく別次元のことだったのです。映画館に行った時とかに、人が作ったフライヤーを見て、「自分なら違う作り方するのに」なんて生意気なことを思ったりしていたのですが。見るのと、実際につくるのとは、大違いでした。そんな当たり前のことに、やっとその時気づいたのでした…。とはいえ、飛び込んでしまった世界でしたから、見よう見真似を交えながら、一生懸命、デザインを考えたのでした。
そんな私を支えてくれたのは、私の親しいお客さんたちでした。力不足な私にいつもあたたかく接してくれて、貴重なアドバイスをたくさんしてくれました。内心は「こりゃヒドイ」って思ってらっしゃったのかもしれないのですが(笑)。自分一人の力で生きてるんじゃないんだなって、その時に痛切に感じました。私のキャリアをつくってくれたのは、私のお客さんたちです。もちろん、今だってそうです。つい先日も、とてもうれしい仕事の話を声かけていただきました。心から感謝です。いろんな人に支えられて生きているんだなって、つくづくそう感じてます。
ついでなので、以前つくったフライヤーをもう一つご紹介。同じくヴィスコンティ監督作品の「熊座の淡き星影」という作品のフライヤー。このフライヤーは自分ではとても気に入ってて、周りの評判も良かったです。画像ではわかりにくいのですが、全面に銀のインクを使っています。2色の印刷ですが、結構コストがかかりました。この絵柄でB1のポスターもつくられて、池袋の百貨店に貼られた光景は、なかなか壮観でしたよ。自分で持ち上げるのもなんなんですが(笑)。でも自分ではとても思い入れある作品なので、どうせならこっちを本に採用してもらいたかったなぁって、ここで言ってみても無駄ですね・・・。
私の作品はともかくとして、「ミニシアター フライヤーコレクション」には素晴らしいフライヤーデザインがたくさん掲載されていますので、本屋さんで見かけることありましたら、ぜひ手に取ってみてください。
まろろん
オールカラーより逆に趣というか、奥行きというか。そういったものがありますよね。
ヴィスコンティ監督作品は好きです。といっても、有名なものしか知りませんが。(笑)
ここにのってる作品は昔作られたそうですね、力不足(?)かどうかは素人の私にはわかりませんが、どれも好きです。素敵な出来だと思います♪
よこやま
>まろろんさん
ほめてくださってありがとうございます!
モノクロの作品は無理に色を使ったりするより、モノクロの良さを生かした方が良いですよね。最近は妙に凝ったデザインのフライヤーとか多すぎて、いったい何の映画やらわからないものがあったりします。もっとシンプルに映画のスチールを生かせばいいのに、って私は思ったりするのですが。
「白夜」はあまりヴィスコンティらしくない作品でしたが、ヒロインのマリア・シェルがものすごく美しくて可愛らしくて、それだけでも必見の作品でしたよ!
げん
mixiからおじゃましま~す。
フライヤー集に掲載されていらっしゃるとはすごいですね!!
一回目はどのような流れで掲載となったのですか?
自分も作品が掲載されたら、うれしいんだろうなぁ~と
読みながら勝手に妄想してしまいました・・・。(^^;
よこやま
>げんさん
コメントありがとうございます!
フライヤー集は、編集の人が普段から収集したり、配給会社や宣伝の会社に連絡入れて集めたものからセレクションしてるのだと思います。
ま、「美味しい店」とかの本に載ってるお店が必ずにもみんな美味しいわけではないのと同じで、こういう本に採用されたからって優れたフライヤーってわけではないのだと思いますよ。私なんかのが採用されるくらいだから(笑)
そうだとわかっていても、掲載されるとやっぱりうれしいものです♪
*ミトン*
この本、何ヶ月か前に本屋さんで見つけて
ず~っと買おうかどうしようか迷っていたんですよ~
ジャムサンドさんのデザインされたものが
出てるのなら買わなくちゃ!ですね♪
すごく素敵です。
よこやま
>ミトンさん
さすがっ!本屋さんでチェック済みでしたか。
この本、私のフライヤーはともかく(笑)、素敵なフライヤーたくさん掲載されてて見てるだけで楽しいですし、巻末には映画のデータも掲載されてるので、資料としても手元にあっていい本だと思いますよ。
それからミトンさんにおすすめの本、もう一冊ありました。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4862340296/
↑チェコのアニメーションとか解説してる本です。とても丁寧に作られてる本で感心しました。もうお持ちかもしれないですが、まだでしたらすごくおすすめです!
愚徹
はじめまして。こぐまライブラリから流れて、ちょいと覗かせて頂きました。私は池袋のとある映画館で映写の仕事をしてるんですが、上映しましたよ!白夜も、熊座の淡き星影も!
実は先日コヤの倉庫を片付けていたら、古いポスターが大量にでてきたので、幾つかめぼしい物を持って帰りました(本当はいけないんですが)。その中によこやまさんのデザインなさった「熊座~」のポスターもあります。燻し銀のヴィップなやつ。カッコイイデス。仲間内の評判も上々でしたよ。
映画のポスター、チラシ、フライヤーのデザインは興行上実に重要ですものね。デザインの良し悪しで前売り券の売れ行きが左右されたりしますし。これからも素敵なデザインを!
P.S. 吉祥寺のバウスシアターで11月半ばよりタルコフスキーの特集上映があります。ヴィスコンティ好きの方は、きっとタルコフスキーも好きなはず?
愚徹
ええ、この後気になって本棚をひっくり返したら、「白夜」のパンフレットがでてきました。裏に デザイン:横山ひろあき、印刷:スタジオ ジャム・サンド、とあるではないですか。パンフのデザインもなさっていたのですね。シンプルな、「白夜」のこじんまりとした佳品の雰囲気を良く伝えています。あつかましいですけど、知り合いの方がデザインしたみたいで何か嬉しいです。
竹浪 明
ヴィスコンティ作品の中でも、繊細な内容の美しさが
深く滲んでいるすばらしいフライヤーですね!
ヴィスコンティが見たら、さぞ喜んだことでしょう。
僕の映画のフライヤー、横山さんに作っていただけたこと
改めて有り難く、嬉しいです。
次の時も、よかったらよろしくお願いしますね。
よこやま
>愚徹さん はじめまして。
コメントありがとうございます! びっくりしました。池袋の某映画館の映写技師さんなんですね。その節は大変お世話になりました。上映期間中何度か劇場に足を運びましたが、あの映画館、私はとても心地よく感じました。。本当に映画好きの方たちが運営してるんだなって、伝わってくるようです。そういう方とふとしたことで知り合えて、とてもうれしいです。不思議なつながりを結んでくれた「こぐまらいぶらりー」、おそるべし!ですね(笑)
「白夜」のパンフレットまで大事に持っていてくださって、本当にありがとうございます!あの頃は一人で仕事始めて間もない頃だったので、本当に必死でつくりました。「白夜」の繊細で可愛らしい部分を、パンフレットにも表現できたらなぁって考えてつくりました。こんなコメントをいただけるとは思ってみなかったので、本当にうれしいです。
吉祥寺バウスのタルコフスキー特集、私もつい先日知ってチェックしていました!パラジャーノフの特集上映もやるんですよね。ひさしぶりにスクリーンで見れる機会なので、なんとか時間つくって観に行ってみたいと思ってます。また何か良い情報ありましたら、ぜひ教えてください。
今後ともどうか宜しくお願いします!
よこやま
>竹浪さん
とてもうれしいコメント、ありがとうございます!
「熊座」のこのフライヤーやパンフレットの制作のディレクションをしてくださったのは、竹浪さんと私をつないでくださったYさんなんですよ。力不足の私を、文字組のことからいろいろアドバイスしてくださって、あの時はホントにお世話になったんです。そして竹浪さんとも知り合えたのですから、Yさんとヴィスコンティに感謝ですね。・・・あ、ヴィスコンティは「俺は知らん」と言ってますが(笑)
竹浪さんのフライヤー制作に関われたことも、私にとってはとても大事な出来事でした。またいつかお役立てそうなことあったら、いつでも声かけてください!