松岡正剛の講演会に行ってきました!
今回の講演会は、松岡正剛が2000年から6年間かけてWeb上で連載執筆した「千夜千冊」を、本として新たに集成した「松岡正剛 千夜千冊 全7巻」の出版記念の特別講演でした。ですので、話のほとんどはこの全集についての解説に沿った話。それでも歴史、宗教、哲学、自然科学、文学、美術、漫画、音楽・・・etc、とあらゆる分野に通じた「千夜千冊」という「知」への冒険の断片を、ほんの少し垣間見させてもらえて、もうこの上なく幸せなひとときでした。
この全集、10万円近くするのですが、講演会聞き終わった直後は欲しくて欲しくてたまらなくなってしまいました。予約申込書にサインする直前で、踏みとどまりましたが。20代の時に、約50万円の夢二復刻本全集を店頭で衝動買いした私ですが、さすがに少しは大人になった(?)ので・・・。う〜ん、でも欲しい。思いがけない収入があったら(なくても)そのうち買ってしまうかも。
http://www.kyuryudo.co.jp/Senya-Sensatsu/flame.htm
講演会を聴いて、いろいろ考えさせられたこと、これから考えてみたい宿題を、たくさんもらってきたのですが、私の足りない頭でここに論を展開してもつまらないので、印象に残った話を少しだけ。
「千夜千冊」という執筆活動は6年間にわたって続けられたわけですが、その道程は、松岡正剛さん自身が当初考えていた以上に大変な、壮絶な毎日だったようです。普通の人が何年もかけて読み解いていくような、内容の濃い、重みのある本に、毎日必ず1冊づつ向き合い、格闘し、執筆を続けていったのですから、それはもう私たちの想像を遥かに超えた行為だったのだと思います。
でもそんな過酷な作業の一方で、新たな発見や楽しいこともたくさんあったのだそうです。今回読み直しをする中で、その本に対する自分の認識や捉え方がまったく別のものになることが度々あったそうです。年齢や経験を重ねているわけだから、違って当然なのですが、自分が当初想像していた以上に感じ方に違いがあって驚いたそうです。それから本を読むときにどういうシチュエーションであるのかで、つまり、朝読むのか夜読むのかという時間によっても、仕事場で読むのか喫茶店で読むのかという場所によっても、自分の体調の良い悪いによっても、些細な話、本にカバーをかけて読むのかない状態で読むのかによっても、その本の印象がかなり違ってくるのだそうです。本好きな人なら誰でも、なんとなくうなずける話ではあるのですが、あれだけ本に精通してきた正剛さんが気持ちを込めてそう語るのだから、とても興味深い話した。そして正剛さんが語ってました。「本というものは、二度以上読まないとダメなんだと、私自身があらためてそう思った」と。
そして、とてもうれしかったこと! 正剛さんは本を読む時にペンでマーキングをしながら読むのだそうですが、そのペンは「PILOTのVコーンというボールペン、それも青インクじゃないと調子が出ないんです(笑)」とおっしゃってたのですが、私がそのときメモをとってたペンが「PILOTのVコーン、青インク」なのでした(笑)。私もずっと愛用してるペン。書く道具って、高級だから良いというものではなくって、その人にとっての「ツボ」のようなものがあるのです。喩えが難しいのですが、背中のかゆいところに必ず手が届く「魔法の孫の手」みたいなものでしょうか(なんと貧相なイメージ…)。とにかく、そんなところに正剛さんとの共通点が見つけられて、私はうれしくってたまりませんでした。思わず立ち上がって「正剛さん、私もです!」と叫びたかったほど(笑)
あぁ、ただのミーハーな話になってしまいました・・・。
でも本当に、私にとってはたくさんの元気をもらえた、心が生き返るような一日でした。正剛さんのような人でさえ、今も毎日、命をかけて書物と格闘している。果てのない「知」への冒険の道を、全力で走り続けている。そのことが心に深く響きました。私も何かやらなくちゃって・・・真剣にそう思いました。たくさんのことはできなくても、たった一つのことでもいいから、自分はこの井戸を掘ったのだと、誇れるような仕事がしたい。怠惰に過ごしてる時間なんてないのだと、あらためてそう心に誓い・・・あ、阪神×中日戦が気になるから、この辺で(笑)
エヌガール
夢二全集。。。わたしもローン組んでしまった同志でしたが、50万円もしたんだっけ。。。当時Mac一式100数十万円のローンも組んだからバカでしたー(笑)。
松岡さんてつくづく偉大な編集者だなあと思います。わたしにとってはそういう敬愛ですが、うちの家人は高校生のころ、熱烈な<遊>小僧で(笑)、編集部に遊びにいってオリジナル原稿用紙数枚もらってきてたの分けてもらいました。大学で出合ったころも、<遊>の<は組>の半纏を着てました!!!
その信仰は今も非常に深く(?)わたしがくずかごに読み終わった松岡事務所からの通信を捨ててたら、ソッと拾いだしてて(笑)。踏み絵みたい???
よこやま
>エヌガールさん
夢二全集は50万以上しましたよ。更にローンの金利入れると・・・
いや、まったくばか者ですね。お互いに(笑)
エヌガールさんの旦那さんとは気が合いそうですね(笑)
そのお気持ち、よ〜くわかります。松岡正剛のものの考え方が肌に合う人たちは、みんな熱烈なファンになってしまうんですよね。自分の文章読み返したら、ホントに信者みたい(笑)。松岡正剛がどんな人か知らない人は、「横山はなんか変な宗教にハマってるみたい」って思われてるかもしれません(笑)。わかる人にわかればいいんですけど。まぁ、言ってみれば「本」という名の信仰なのかもしれませんね。そういう信者は、世の中にいっぱいいますよね〜。
会場では「遊」のバックナンバーが、未だに販売されててびっくりしました。20〜30年かけて在庫売ってる雑誌って、なんかすごい存在ですよね。
竹浪 明
「千夜千冊」、世界の千の山を登攀するような偉業ですね。
ページへのマーキングや書き込みという足跡…
以前オペラシティの「東京大聖書展」で、芥川龍之介や太宰治が
書き込みした聖書が展示されていて、それぞれ熱い思いが伝わりました。
僕もクリスチャンではありませんが、聖書にもマーキングしています。
「夢二復刻本全集」はお宝ですね!
「どんたく」の復刻版は持っていて愛読しましたが。
「洗濯日和」に書かれている個展のお話
「夢二復刻本全集」同様に、観てみたいですが
横山さんのお心次第で、ご自身にとって一番よいようにお決めくださいね。
モリッスィー
「本というものは、二度以上読まないとダメなんだと、私自身があらためてそう思った」
むむむ…。数え切れないほどの本に真摯に向き合ってこられた方の言葉だけあって、重みがあります。確かにそのときの状況によって、本に対する印象はかなり変わりますものね。
よこやま
>竹浪さん
先日は楽しい時間をありがとうございました!
竹浪さんのお陰で、ギャラリーの方とも知り合えて、本当にうれしい出来事でした。最近またちょっとバタバタしててゆっくり考える時間がないのですが、近日中にさえさんと連絡とってみますね。
聖書へのマーキングって、なんだかカッコいいですね。聖書を信仰のガイドラインとしてではなく、高度な思想が結実した「ひとつの書物」として対峙してみると、またいろんな示唆を与えてくれるんでしょうね。
私も本を読む時はよくマーキングします。マーキングするかしないかで読み方が変わりますよね。いらなくなっても古本屋に持ち込めないのが難点ですが(笑)
夢二の「どんたく」は傑作ですよね! 夢二の全集は私の数少ない宝物のひとつです。全部で五十数冊あって、どれもホントに美しい本ですので、今度ぜひうちに見にいらしてください。
よこやま
>モリッスィーさん
そうなんです。松岡正剛さんにそう言われてしまうと、私の今までの読書っていったいなんだったんだろうって気持ちになりました(笑)
これからは衿を正して、真摯に本と向き合っていこうって心に誓いましたが、三日も続かなかったです・・・
デジ一眼、夢中になってるみたいですね! これからどんどんカメラライフ走っていってください。そして「カメラ貧乏」の世界を堪能してください(笑)
モリッスィー
カメラ貧乏…うわぁ嫌な言葉ですね(笑)。
よこやま
>モッリスィーさん
カメラは金食い虫なので、お気をつけて〜(笑)
ちなみにアナログのオールドカメラの世界も楽しいですよ!