友人に案内いただいて、一昨日コンサートに行ってきました。
「恋いこがれる。」
〜ルネサンス・バロック音楽で綴る イタリアの愛 フランスの雅 スペインの舞〜
リュート奏者・井上周子とテノール歌手・長尾譲によるコンサート。
400〜500年前のヨーロッパの音色に酔いしれました。私はリュートの生演奏を間近で見るのがはじめてで、もうそれだけで興奮。井上さんの情感のこもった、それでいて抑制の利いたリュートの美しい音色にうっとりしましたし、長尾譲さんのテノールの声質も素晴らしかったです。プロフィールを見ると、どちらかというとバロックの唱法の方が専門なのかと思うのですが、私は前半の中世風な曲の、少しこもった声の感じ(?)の唱い方がとても魅力的に聞こえました。
演奏の曲目は2部構成になっていて、前半は15世紀末から16世紀にかけてのルネサンス期の音楽、後半は16世紀〜17世紀のバロック音楽となっていました。中世の舞曲風なかわいらしい曲から、オペラの原型を感じさせる高揚感に満ちた曲まであって、とても工夫されたセンスの良い選曲でした。時代や国によって曲の表情は様々で、演奏の仕方や歌唱の方法にも明らかな違いがあって、その変遷を垣間みられてとても楽しかったです。
私は音楽を系統立って聞いてないので、漠然と「古楽っぽいものが好き」と思ってるだけなのですが、今回のコンサートでルネサンス〜バロックの曲をいろいろ聞いてみて、自分が特に好きに思うのはどうやら中世〜ルネサンス期の時代に当たるのだなって確認することが出来ました。自分が良いと思う音楽の基準は「想像力をかきたてるかどうか」という、その1点に尽きます。ですので、時代区分もジャンル分けも本来はあまり意味のないことです。ただ、私にとってはクラシックと呼ばれるものにどうしても興味が湧かなくて、古楽と呼ばれてるものには不思議な魅力を感じてしまって、その理由や境界線がどこにあるのかを知りたいと、ずっと思っていたのです。それが自分なりにちょっと理解できてうれしかったです。
古楽を聞いていると、どこか別の世界に自分を連れて行ってくれるような、不思議な感覚を呼び起こされます。その浮遊感、高揚感は、60年代サイケロックやアシッドフォークの“トリップ感”に通じるものを感じます。個人の内面的な行為と音楽との結びつきがとても強いように思うのです。一方で18世紀以降のクラシックを中心とした西洋音楽は、ステージ上の演奏者と観客との間に距離があるのが前提なようで、音楽は「鑑賞される」ものとして高い棚の上に置かれてしまった印象です。もちろんどちらが良い悪いの話ではなくて。その時代毎に、音楽が担う役割が変化していったのでしょう。そうした流れの継承と反発の系譜で、現代の音楽を見渡してみると面白いですよね。
最近ずっと忙しくてくたびれてましたが、ひさしぶりに文化的(笑)なことに触れられて、心にたくさん栄養もらえました。会場となった、新宿オペラシティの近江楽堂はこじんまりとした空間ですが、音の響きが良くて、今回の演奏にすごく合ってました。観客の皆さんはかなり聞き込んでる感じの方が多くって、著名なプロの演奏家の方もいらっしゃったようです。私なんか場違いでは?と、ちょっと恐縮してしまいましたよ。でも本当に素晴らしいコンサートだったのでもっといろんな人に、特に若い年代の方に、もっと聞いて欲しいなぁって思ったりもしました。
古楽がこれからもっと人気出るといいのですが。古楽が大ブレークして、CDショップでは古楽のスペースがヒップポップをしのぎ、ライブハウスでは古楽ユニットの演奏が大人気で会場はいつも超満員、電車で隣の人のipodから漏れ聞こえる音色は古楽ばかり! なんていう時代は・・・来るわけないか〜(笑)。せめてもうちょっと、古楽を身近に聞ける環境に、なってくれるといいですよね。
写真は近江楽堂の天井(笑)。演奏中に写真撮るわけにいかなかったので。
うと
夕べ、久しぶりにピアノのコンサートを聴きにいきました。
自分がどんなに飢えていたのか痛感しました。
正直、ピアノよりも、声楽が聞きたいです。パイプオルガンの演奏も…。だから、ここ読んでうらやましくなって、コメントしています。
ちょうど、時間があったら、自分の音楽鑑賞の「ツボ」について書きたいと思っていました。もちろん、よこやまさんみたいには、上手く表現できないけどね。でも今日はシンクロしていて、うれしかったです。
うと
うとです。ずっと、迷っていたのですが、私のブログ「うとにっき」のお気に入りに、横山さんのブログを入れさせていただきました。よろしいでしょうか?
うと
たびたびのコメント、すみません。夕べ、とっても聞きたかったのが、ジョスカン・デ・プレの「真夜中のミサ曲」だったので、ルネッサンス期が好きとあったのが、うれしくて、興奮してしまいました。(注:私はあまり音楽は詳しくありません)。
うと
またまたコメントします。ごめんなさい。
ジョスカン・デ・プレと、シャルパンティエを混合していました。”真夜中のミサ曲”はシャルパンティエのほうでした。十数年ぶりに聞きたくなって、CDを検索していたら、間違って覚えていたのに気がつきました(オハズカシイカギリデス)。15世紀と17世紀の作曲家の曲を、私は20世紀に聴いていました。今聞いたら泣いてしまわないか、心配です。
よこやま
>うとさん
不思議なシンクロがあったようで、なんだかうれしいですね。
音楽のこと、私は実のところ、恥ずかしいくらいに知識が少ないのです。なので、音楽のことを書くのはすごく緊張するし、何か間違ったこと書くと恥ずかしいので、積極的には音楽の話題に触れないようにしてるんです。でも昨日はがんばって文章書いてみました。こうやってリアクションいただけると、とてもうれしいです。
うとさんも古楽が好きなんですね。たぶん私なんかよりずっと詳しいと思いますよ。ジョスカン・デ・プレもシャルパンティエも、恥ずかしながらはじめて名前知りました。ひょっとしたら曲はどっかで聴いてるかもしれないのですが。私はなんでも亜流なものばかりに走ってしまうので、その分野をなかなか深めることができなくって。考えてみたら私の中世趣味は、亜流なものへの愛着、王道なものへの反発、みたいなものかもしれません。性格がひねくれてるんです(笑)
私が持ってるCDをあらためて見直してみたら、14〜15世紀くらいのイタリア、スペインの曲が多かったりします。「スペイン古音楽成集」の一枚「《モンセラートの「朱い本」》は、もう、何度も何度も繰り返し聴いてます。そのアルバムで指揮をとったグレゴリオ・パニアグアというヘンテコなおっさんがいて、私はその人をしばらく追っかけてアルバム何枚か買ったりしました。古楽というより、ほとんど彼の創作の世界のようなんですが、私は大好きな音楽家です。うとさん、機会あったらぜひ聴いてみてください!
あ、それから「お気に入り」入れてくださってありがとうございます!
なんとなく遠慮してましたが、またコメント入れさせていただきますね。
うと
よこやまさん、たくさんコメントしちゃって、失礼しました。
私のほうこそ、音楽については書くのがはずかしいくらい、無知というか、すごいセンスなんですよ(笑)。高校時代、シューベルトの歌曲と松田聖子の「赤いスイートピー」を同じテープにダビングして、繰り返し聞いていたくらいですから…。
音楽を聴いていると、よこやまさんのいうように、どこか別の時代、世界に連れて行ってもらえるような気分になる時があります。自分の心の奥底に入り込んだり、何も考えないで、ただ聞き入ってしまったり…。夕べは学生時代のカセットテープをだしてきて、さがしてみたら、シャルパンティエの「真夜中のミサ曲」がありました。寝る体制で聞き始めたのですが、わくわくしました。眠りに引き込まれるのがもったいなくて、何度も瞬きをして、最後まで聴きました。そして満足して眠りにつきました。古楽が好きかといわれると、ちょっと断言できないのですが、使われている楽器の”音色”は好きですよ。おすすめのCD探してみますね。
コメント楽しみにしていますね。
よこやま
>うとさん
私も聞いてる音楽の節操のなさは負けないと思います(笑)
私のipodの中身は人に見せられないくらいに、無茶苦茶な内容です。
カセットテープって、まだ聞けるんですね。私も大事なテープたくさん残していたのですが、今年の引っ越しの時、思いきって全部捨ててしまいました。もうカセット聞ける機材が手許にないし、いろんな意味で整理してしまいたかったので。今になって、あー、あれだけは残しとくべきだったってのがあるのですが(笑)。
古楽は楽器の音色が素敵ですよね。近代の音楽とそれ以前のものと、実際何がどう違うのか、詳しいことは私は全然わからないのですが、あの楽器の音色だけとっても、特別に心惹かれる感じがします。
《モンセラートの「朱い本」》はホントに素晴らしいので、ぜひ聞いてみてくださいね!