名刺の話

この一週間は、なぜか名刺の仕事がたくさん入ってきました。
私の仕事の中で、名刺の仕事の割合はほんのちょっと。月に2〜3件という感じなのですが、この一週間で20名分くらいの名刺を制作・印刷しました。ときどきこんな風に、同じ傾向の仕事が重なることがあるから不思議です。9〜10月は、ページ物の制作がやたらと続いて、2ヶ月間で700ページ分くらいの版下をつくったりしました(指定版下ではなくって、完全版下データです)。これじゃいくらHDDの容量があっても足りません・・・。

さて、名刺の話。名刺って、その人の個性やステイタスを表す大事なアイテム。名前と住所が読めれば何だっていいって人も大勢いますが、自分なりのこだわりを大事にした名刺をつくりたいって思う人が、この十年くらいで飛躍的に増えました。色数の多い名刺、両面フルカラーの名刺とかも、印刷のコストが格段に安くなったので、その傾向にますます拍車がかかります(品質やデザインのレベルが上がったかどうかはまた別の話)。私のところにも名刺の相談が時々あります。街の名刺屋さんとかで1500円でつくれるものなら私なんかのところにわざわざ相談来たりはしないので、たいていはクオリティ重視の手間がかかる名刺だったりして大変です。。。あ、ごめんなさい。愚痴ってるわけじゃないので。そういうやり甲斐のある仕事を預からせていただいてうれしいなぁ(笑)と、日々思ってますよ〜。今まで私が手がけた名刺も、全部並べてみたら結構な数なんだろうなぁ。

ところで、印刷屋の端くれとして少し裏話をすると、名刺の印刷って、実はどこの印刷会社も(名刺専門の印刷所以外は)積極的に受注したくないのが本音だったりします。名刺って、文字の校正とかに手間がかかるし、ミスがあると大変だし、でもクオリティは必ず高いものを要求されるので、とても神経を使います。その割に単価が低くて利益が薄く、名刺の印刷自体には何の旨味もないのです。ただ、名刺の仕事がその他の仕事への突破口になるというもくろみがあったりするので、世の印刷会社の営業マン達はこぞって名刺の注文を取ろうとするのです(制作の現場は泣かされます)。
たとえば、印刷営業マンがはじめて行った取引先で、お客さんと名刺交換をさせていただいたら、その名刺をまじまじと手に取りながら、「なかなか凝った御名刺でねー」とかなんとか適当なことを言いながら、「こういうものを請け負ってる印刷会社さんとはもう長いおつきあいなんですか?」とかいろいろ情報を聞き出したりするんですよねー。私も前の会社ではいちおう営業やってたので、そんなベタな話をしたりしてました。

で、なんとかうまく話が折り合えば、お客さんから「そちらでは名刺いくらでできるの?」と聞かれるわけですが、その質問に答えるのが実はとても大変。名刺はその色数や、用紙、印刷する単位、印刷の方法によって金額が大きく変わってしまうので、100枚で1500円でできる場合もあれば、数万円かかる場合もあるのです。その金額の開き方の理由を説明しようとすれば、オフセット印刷とは何なのか、特色とプロセスカラーの違いとは? 面付けって?・・・等々、説明することがありすぎるのです。お客さんから詳しい説明を求められれば、時間をかけて順を追って説明させていただく場合もあるのですが、たいていはそんな面倒な話を聞きたがる人はいないので、「えっと、とりあえず試算してみますから、作りたい名刺のだいたいのイメージと必要な枚数を教えてください」とか言って、その場で即答はせず、後で何パターンかの見積りを出しながら相談させていただいたりします。

名刺に限らず印刷物は皆、その印刷の方法によって金額の計算式が違うので、「価格表一覧」のようなものを提示するのは難しいのです。その時々に応じたベストな方法をその都度考えて、計算をまとめて見積りを出していきます。発注単価が数千円の場合も、数十万円の時も、同じ手間をかけて見積りを出し、印刷の手配の仕方を考えていくのです。。。

長くなってごめんなさい。普段何気なく手にする名刺一枚も、つくってる側ではたくさんの手間をかけてることを知っていただけたらって思って書き始めて見ましたが、収拾がつかなくなってきたのでこの辺で。また気が向いたら続き書いてみます。

これは私の名刺。シンプルがいいのです(笑)