ここでない何処か

いくつか締切が重なっていて、そのうち一つが、やっとさっき山を越えた感じ。原稿を届けに行って、事務所に戻ってひと呼吸したら、どっと疲れが出てきた…。昨日はちょっとしか寝てないので早く帰りたいのだけど、なんだか腰を上げるのも面倒で、事務所で一人ぼ〜っとしてしまった。
そんな静かな時間を過ごしていると、突然また絵を描きたい衝動が込み上げてきたりする。今日の夜はなんとなくそんな気分。でもどうしたってそんな時間を作れそうにないから、あきらめるしかないのだけど。

ふと思い出して、事務所に置いてあった絵をスキャンしてみました。大きい絵なのでほんの一部分だけ(作品全体はこんな感じ)ですが。この絵を最初に描いたのは今から15年くらい前。大学新卒で会社に就職した年の夏に、たくさんの鬱々とした思いを抱えながらこの絵に取り組みました。展覧会に出品したときの最初のタイトルは「此処でないどこか、今でない何時か」という大げさなもの。意気込みは充分すぎるほどあったのに、結局うまく仕上げられなくて、それから何度か書き直したりして、ある程度納得のいく形に仕上がるまで5年くらいの月日を経ました。最初の構図に失敗があったり反省点も多いのだけど、自分では今でも結構気に入っている作品の一つです。この絵が一番いいって言ってくれた人も、今まで多かった気がします。

ここ数年は絵を描くと言っても仕事のイラストばかり。何の冒険もなく、時間もかけていないから、自分でも思い入れできる作品が少ないのです。なんて今更言ってみても、ちゃんと絵に向き合ってこなかったことへの、ただの言い訳かもしれませんが。またいつかあんな風に、じっくり時間と手間をかけて作品に取り組んでみたいなぁって思う。切実に…そう思います。